なんと、三万通の I に対して、二OOO通もの返信があり、リスポンスの高さに大変驚きました。
アンケートの中に一番聞きたい質問として「いまあなたはどこにいますか』という質聞を入れました。
驚くべきことに過半数の人が学校か職場にいることがわかりました。
授業中や勤務時間中に携帯を操作してアンケートに応えてくれているわけです。
I はウェブとはまったく異なった、とんでもないメディアであることがわかったわけです」アンケートの質問を考えるのは非常に難しい。
質問のしかたによっては具体的な答が返って来なり、本質的なことがわからない。
失敗するとまったく回答なしということもある。
私も以前、削人中卯人が無回答という質問を作ってしまった経験がある。
大学の先生に対する質問で「あなたの同僚あるいは知り合いで面白い授業をやっている方がいらしたら、その人の授業のやり方をお教えください」というものだった。
無回答だったのはおもしろい授業をしている人をほとんど誰も知らないし、興味もなかったのだろう。
負け惜しみを言わせてもらえば無回答ということ自体、授業について相互に語り合っていないことがわかったので、効果はあったと思っている。
このように質問の内容によって調査できる事柄が大きく変わってくる。
I を使ったアンケートで、I の影響力をはかる最適な質問は、「今、あなたはどこにいますか?」というものだった。
大変すぐれた質問だ。
「あなたは一日に I をどれくらい使いますか?」と聞いても間接的な答にしかならなかっただろう。
リアルタイムで今どこにいるのか聞くことで、驚く中のゴールキーパーすべき回答が得られたのだ。
大多数の人が学校か職場にいる。
中や仕事中に I を操作してアンケートに答えていた。
ウェブと違って I はどこでもできるとんでもないメディアだということが、つまり授業この質問でリアルにわかったわけだ。
I の影響力を聞くのにこれ以上ふさわしい質問はなかったのである。
Tはいち早く I を利用した集中戦略をとり、成功をおさめる。
「今、あなたはどこにいますか」という質問は、ゾーンでいうと「具体的かつ本質的」なゾーンである。
I の本質がはっきりわかる内容を持っていながら、あまりにも具体的な「どこにいるのか? 」という質問になっている。
具体的な事柄を聞きながら、本質的な事柄に迫ることができるのが、具体的かつ本質的な「質問力」のゾーンとなる。
質問は充分練って作らなければならない。
いくつか考えた上で取捨選択して選んでいく。
あるいは1つの質問をフラッシュアップさせていく。
練るという作業だ。
質問次第で後の作業が変わってくる。
答は必ずしも深く練る必要はないが、質問の方はよく練っておかないと、その後のパフォーマンスや結果が大きく変わってしまう。
質問は思いつくものではなく、練り上げるものと思うのが上達の近道である。
ここまで「質問力」について大筋で整理してきた。
第三章ではよりシンプルな原則を出してみたい。
コミュニケーションの秘肢は「沿いつつずらす」ことにつきる。
私が標語化して、キャッチフレーズのように使ってきた言葉だ。
人と対話する時、相手に沿った話をしないと乗ってこない。
沿っているだけでは話は発展しない。
沿うことを前提とした上で、角度を付けて少しずらしていくのが、私が経験的に得たコミュニケーションのコツである。
この経験の背景には身体の技法の訓練がある。
たとえば武道ではいきなり相手を倒すこともあるが、まずは相手の動きに沿い、その動きを利用して間合いをとりながら身体をずらして技を決める。
相撲の上手投げや下手投げも、相手の動きをまず自分の体に吸収して沿っておくと、2人の体が1つになる瞬間がある。
そこからまた自分の体の方向性をずらしていくと技が決まりゃすい。
2人の方向性が一致しエネルギーが1つになった時、そのままでいれば2人は一体となって動きは起きない。
だが、あえて相手が本来持っていない方向へ、ずらしを入れると、非常におもしろい効果が出るのである。
言葉のやり取りも同じだ。
私は身体次元におけるコミュニケーションを研究テーマにしてきたので、対話も身体を基盤に考えている。
相手とコミュニケーションをとるには、まず身体の次元で寄り沿って話をするのが基本だというのが私の考えである。
対話において、相手に「沿う」とは、身体レベルで言うと「うなずく」に当たる。
うなずきがしっかりできていると、沿ってもらっていると感じるので話す側が勇気づけられる。
若い人は簡単にはうなずかないが、社会人になるとうなずく人が格段に増える。
知らない人や友だち以外の人とうまく関係を保っていくためには、うなずくことが大事だと学習してきたからだ。
重要な仕事や大切な付き合いでは、うなずく回数が増える。
また田舎の人の方が、都会の人よりうなずく回数が多い。
講演会をやるとはっきりと違いが出る。
普段の対話でもかなり深くうなずくので、こちらは心温まる気がして話がしやすい。
世代的に言うと、テレビやゲームが出る以前に育った人の方が、レスポンスが大きい。
身体レベルで応答することによって、心が通い合う感覚を共有できる。
うなずくという身体レベルでの沿う技を意識的に練習する場は少ない。
本来は応答する柔らかい身体ができていて、うなずきが自然に生まれるのだが、冷え切った身体では自然にうなずくことができない。
だから生活の中で意識的にうなずきを繰り返すことで、身体の他の部分も応答する身体へと変えていくしかない。
大学では時々うなずく練習をさせている。
自分の呼吸や相手の呼吸に合わせてうなずくと聞が取りやすい。
相手の話が一区切りして相手が息をつくところでこちらもうなずくなど、呼吸をするたびに顔を下げて聞を入れると、うなずく技が習慣化しやすい。
これを言語レベルで言うとあいづちに当たる。
「なるほど」とか「そうですね」とか「はあ」とか「ほう」とかあいづちを入れると、ずいぶんと話しやすくなる。
あいづちはうなずくのと同じ効果がある。
相手が途中で気分を害してしまうと話が聞けなくなってしまうが、取りあえずあいづちを打っておくことで、本当は相手の話に同意していなくても相手の話を引き出して聞くことができる。
「質問力」の前提になる作業である。
質問はクリアな言葉で行なわなければならないが、身体のレベルで沿う構えがないと、質問が素っ気なくなってしまう。
うなずくかあいづちを打つ、あるいはあいづちに近いが相手の言葉をオウム返しに繰り返す技もある。
場を流して次の言葉を引き出すのに効果的である。
あまり意識的にやるとわざとらしいが、相手の言葉を確認するように繰り返して言ってあげると、相手は話を続けやすいものだ。
ただし語尾を上げた疑問形にしてはいけない。
あくまでも語尾は上げずに繰り返す。
いわばオウム返しの技だ。
相手の言葉を反復して繰り返しても、新しい意味は何も生み出さないが、対話上手な人でもけっこうこの技を使っている。
「言い換え」の技と「引っぱってくる」次の段階の沿う技には「言い換え」がある。
相手の言った言葉を自分の言葉で言い換える技だ。
意味は変わっていないが、聞き手が同じ内容を違う言葉で言い換えることで、内容がきちんと消化されていることが相手に伝わるわけだ。
「言い換え」は話の理解度を試す上で非常によい方法である。
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